気持ちは固まった。条件提示するには
どう話を持っていけばいいだろう。
早く動かなければ、時間がない。
縁談と言っていたが、援助が
前提にあるから断れないだろう。
この状態では代替案は見つからない。
会社自体を調べてみなければ
何も始まらない。

幸太から聞いていた会社情報から翌日
手始めに登記情報を調べた。
資金繰りは悪く、銀行への返済は
滞っているようだった。自宅が担保と
なっており、今すぐに差し押さえに
なることはないだろうが、 
遅延損害金が加算されどんどん
状況が厳しくなる事が予測される。 
今の状況で他からの借り入れは
望めないだろう。
直接、藤岡製作所にも足を運び、
従業員にも話を聞いてみたが
半年ほど前から給料の支払いが
遅れる事があり、2ヶ月前から給料も 
出ていないという。
状況的には最悪だった。
社長は悪い人ではなさそうだが、
この状況なのにも関わらず
“今までも何とかなってきたし、
どうにかなるでしょう”と楽観的。
従業員は士気が下がっているようで、
やる気が感じられない。私に対しても
不信感を表し、あからさまに嫌な態度を
出してくる人もいた。それでも誠実に
対応しようと“お話を聞かせて欲しい”
と頭を下げた。
この状況で援助してくれる人が
いる事は、結婚の条件さえ
なければとても有り難い話だ。
でもその結婚が受け入れられない
のなら、おそらくこの援助は
無効になる。この状況で他に
援助してくれる人を探すのは
無理だろう。だからこそ、
“ウチの会社なら援助が出来る”
という事が私の計画には必須だ。
ただ、父に話を通さなければならないし、話をしたとして納得しないだろう。
何しろメリットがない。
利益が見込めない状態で
援助をするのはリスクが有り過ぎる。
それに私自身が七海さんと接触する
可能性があるこの場所に出来るだけ
関わり合いたくない。それなら
支援という形で、従業員の未払い給与と
銀行からの借り入れ分を融資するのは
どうだろうか?これなら金銭だけの
やり取りで、関わり合いを最小限に
抑える方向に持っていくことが可能だ。
藤岡製作所も第三者が経営に携わるより
今まで通りに自ら行う方が都合が
いいだろう。
これであれば、きっと断らないはずだ。
幸太がどう決断するかでこの話を
藤岡製作所に持っていくかどうかが
決まる。もし幸太の決断が私に
向くのであれば、何が何でも父は
説得してみせる。支援方法は纏まった。
後は幸太にどう伝えたら選んで貰えるかだ。実際に動くのは私だが、
幸太的には私が動くより父に動いて
貰える方が信用性があるだろう。
だったら私が父に頼み、支援を
お願いするという事で
話を持っていった方がいい。
それに子どもじみた考えだが、
私自身ただでさえ可愛気がないのに、
こんなバリバリ動いて強い女アピールは
したくない。
よし。これで幸太に話を持っていこう。