チュン…チュン…


「……ん…」

春の風に誘われてやってきた鳥たちの声で私、黒瀬愛梨(くろせ あいり)は目を覚ました。

眩しさに細めた目に映るのは真っ白な天井。

そういえば私、昨日、退院したんだっけ…
私は2年間意識を失っていた、らしい。
病名は解離性健忘。
ストレスとかで記憶を失ってしまう病気だ。
そのせいで、中学1年生までの記憶がまるで無い。

病院の先生には、自分で記憶を見つけろと言われた。

…でもさ、そんなの急じゃない?!
昨日、目が覚めたばっかりなの!

急に言われても…何言ってるのか、わかんないよっ…。

…はぁ、とりあえず、何か考えても意味無いし
テレビでも見ようかな。


『 続きましては、今、大人気アイドルグループのseason(シーズン)の皆さんです!』

そんな声と共に登場してきたのは、4人の男の子。


『 どーもっ!晴海(はる)でーす!』

桜色のTシャツを着ている男の子がそう言った。
…ん?この人、なんか見覚えあるような…。

少し目線をずらす。
目の先にあるのは、一枚の写真。

そこには、彼とそっくりな男の子がいた。

やっぱり…!でも、なんで彼の写真がここに…?
写真の様子は、多分、私の小学校卒業記念の時の写真かな…。

ということは、私の…、?!
痛っ…う、やば……。

私の頭に劈くような痛みが走る。

う、………あ……。


そこで私の意識は途絶えてしまった。