好きだから、触れる。




「俺、女子と話すのが、あまり得意じゃなくて。……正直、どう接していいのか、わからない」

首に手を当てた彼が、ゆっくりと話す。


うん。知ってる。


同じクラスになって知った。
話しかけるのは、たいてい女の子のほうからで。
彼から話しかけるところを見かけたのは、数えるほどしかない。

私とだって、滅多に話したりしないし。
こうして向き合っているのも不思議なくらいだ。


……あ。ダメだ。また緊張してきた。


耳までたどり着けずにいる指先で、制服のスカートの折り目をなぞる。
彼は、クシャクシャと丸めていたタオルを首にかけると、フーッ、と長く息を吐き出した。


「距離の取りかたも、なにが正解なのか、……っていうか。たぶん俺の場合、間違いだらけだと思う」

どうやら彼の指先も落ち着かないようで、胸元や、耳の後ろを行ったり来たりする。

彼に対して、「かわいい」って表現を使うのは失礼かもしれない。
それでも、ゆっくりと言葉を選びながら話す彼の姿に、思わず目を細めてしまう。

忙しく動いていた心臓が、規則正しいリズムを取り戻していく。
私は、背もたれに預けていた体を起こし、次の言葉を待った。