口数が多いとは言えない彼。
「そこが魅力的なんだよね」と、みんなが言う。
私も、そう思っているうちのひとりだ。

学校中の人気者というわけではないけれど、私よりもうんと背の高い彼は、何処にいても目立ってしまう。
見つけるのは簡単だった。


「あの……。もしよかったら、一緒に出しておこうか?」

そろそろ練習に戻ったほうがいいだろうと、気を利かせたつもりだったけれど。

「いいや。待ってるから一緒に行こう」

彼の口からは、想像もしていなかった言葉が飛び出してきた。

「えっ!?なんでっ?」

思わず声に出してしまった。
私のその驚きように、彼は切長の目を丸くした。

「……あ。……えぇっと。……嫌、ってわけじゃなくて。まだ、時間がかかりそうだから」

焦る私を見て、彼は丸くしていた目を、今度はゆっくりと細めていった。

「いいよ。待ってる」