***
「耳たぶ触るの、癖なの?」
放課後の教室で、提出できなかった進路希望調査票を記入していると、運動着姿の彼にそう声を掛けられた。
「……え、」
考えごとをしていたせいか、無意識のうちに触っていたんだ。
机に肘をつき、耳たぶに触れていた私は、慌てて姿勢を正す。
彼は自分の机の中を覗き込み、一枚の用紙を探し当てると、それをヒラヒラと揺らし、「忘れてた」と言いながら私の前の席に座った。
どうしよう…。
彼が教室に入ってきたことに気づかず、変な癖を披露していたのはもちろんのこと。
すぐそばにある彼の存在に、私の心臓が慌てふためく。
「うん。癖なの」と。サラリと言ってしまえばそれでおしまいなのに、それができない。
手にしていたペンをきつく握りしめ、ゴクリと喉を鳴らした。
「ごめん。ペン貸して」
椅子に腰掛けた彼が、顔をこちらに向ける。
広げられた彼の手のひらは、想像していたよりも大きく見えた。
「………あ、うん」
ペンケースから取り出したペンを彼の手のひらに乗せると、彼は、さんきゅ、と言って前を向いた。
「耳たぶ触るの、癖なの?」
放課後の教室で、提出できなかった進路希望調査票を記入していると、運動着姿の彼にそう声を掛けられた。
「……え、」
考えごとをしていたせいか、無意識のうちに触っていたんだ。
机に肘をつき、耳たぶに触れていた私は、慌てて姿勢を正す。
彼は自分の机の中を覗き込み、一枚の用紙を探し当てると、それをヒラヒラと揺らし、「忘れてた」と言いながら私の前の席に座った。
どうしよう…。
彼が教室に入ってきたことに気づかず、変な癖を披露していたのはもちろんのこと。
すぐそばにある彼の存在に、私の心臓が慌てふためく。
「うん。癖なの」と。サラリと言ってしまえばそれでおしまいなのに、それができない。
手にしていたペンをきつく握りしめ、ゴクリと喉を鳴らした。
「ごめん。ペン貸して」
椅子に腰掛けた彼が、顔をこちらに向ける。
広げられた彼の手のひらは、想像していたよりも大きく見えた。
「………あ、うん」
ペンケースから取り出したペンを彼の手のひらに乗せると、彼は、さんきゅ、と言って前を向いた。



