黒い龍は小さな華を溺愛する。



「はい……初めてなのでご迷惑にならなきゃいいんですけど……」


「篠原さん優しいから余裕でしょ」


そう言いながら私の髪の毛にハサミを入れていく。


髪を切るなんていつぶりだろう。


私の長くて黒い髪が、敷いていた新聞紙の上にどんどん落ちていく。

なんの迷いもなく、手慣れた感じで切っていく紫藤くんは本当にすごい。

そしてついに前髪に突入した。


私の顔が隠せなくなると思うと、急に怖くなってしまった。

でも後には引き返せない。

前髪がよけられ、まぶしい日差しが目に当たる。


「え、マジかよ」


私の顔を見た紫藤くんが驚いて手を止めた。


この反応がすごい嫌だ。


常盤くんも秋元って人も、みんな驚くくらい私は……。


しかし紫藤くんは再び前髪を切り出して、「なるほどねーこれはやりがいがある」と口角を上げた。


「あの……笑っちゃいますよね」


「え?」