黒い龍は小さな華を溺愛する。



「おはよー……」


振り返って挨拶できたのは、私の中での大きな一歩だ。

それに対して常盤くんも自然に「はよ」と返してくれた。


あ、私タオル持ってたんだ!


鞄に入れてたタオルを常盤くんに渡した。


「これよかったら……」


「気が利くじゃん」


そう言って受け取ったのを見たクラスメイトがまたこそこそと言っている。

今度は常盤くんに媚びてる、とでも言ってるのかな。

もう私が何をしたって面白くないんだろう。


「一人で水浴び……ですか?」

「まさか。宗佑だよ、来る途中の公園であっちから水かけてきやがって」


小声で言いながら私のタオルで顔を拭いている。


紫藤くんと水遊びしてたんだ……想像したら可愛くて笑ってしまった。


「なに笑ってんの?」


「いえ別にっ」


さっきあんなことがあったのに、笑っている自分に驚く。

常盤くんがいなかったらきっと落ち込んでいたままだったと思う。


常盤くんの力ってすごいな……。


「あ、宗佑が昼休みPCルームにきてって」


「え?」


「ほら、例の件やるから」


例の件って、髪を切るっていう……?