黒い龍は小さな華を溺愛する。


〝相羽くんにやられました〟


なんて言えるはずもなく。


くすくすと笑い声が聞こえてくる。


悔しくて恥ずかしくて、私は俯いて唇を噛んだ。


「す、すみま……」


ガララッ!


私が言うのと同時に扉が開く音がした。


みんなの笑い声が一瞬にして消えた。


「お、常盤今日も来たのか!」


先生の言葉に扉の方を見ると髪が濡れた常盤くんが立っていた。

その姿に、再びみんながざわつく。


特に女子は色めき立っていた。

確かに、髪を後ろにかき分けた常盤くんは妙に大人っぽく色気がある。

あの綺麗な顔が少しも髪に隠れず全面に出ているのだから、みんなが騒ぐのも当たり前だ。


「おい、なんでそんなに濡れてんだ!?」


先生の問いかけに「水浴びしてたから」とだけ答えた。


この時期に水浴び!?


ゆっくりと私の方に歩いてきて、後ろの席に座った。

昨日会ったばかりなのに変に緊張してしまう。