黒い龍は小さな華を溺愛する。


この人は役者になれるんじゃないだろうか。

呆れて何も言葉がでてこなかった。

でもここでスリッパを履かなかったら、ますます周りから言われるだろう。


「あ……ありがとう」

「誰がこんなことしたんだよ……」


受け取ったとき、本気で心配してるように見えた。

演技がうまくて反吐が出る。

その様子を見ていた周りの子たちが悲鳴を上げた。


「相羽くん!いくら元カノだからって二股してた女に優しくする必要ないじゃん!」

「そうだよ!昨日もだけど、なんでこんなやつのためにさぁ!」


その子たちの方を見て、切なそうに微笑む相羽くん。


「でも俺は無視できないよ、沙羅は今でも大事な友達だし」


虫唾が走る。


なんのために相羽くんはこんなことをするんだろう。