黒い龍は小さな華を溺愛する。




そして相羽くんはスマホを出して私の方に見せてきた。


よく見えないけど、あれはあの時の画像だと思う。


それを近くにいる人に見せるそぶりをしてきた。


なんて最低な男なの……!


私は思い切って靴下を脱ぎ、濡れた上靴を履いて中に入った。


ぐちゃぐちゃで気持ち悪い。


悔しいけれど、今はこうするしかない……。


教室に入ると「きたぞ!」と誰かが叫んだ。


「うっわ、マジで履いてきてる……メンタル強くね?」

「池の水でしょ!?汚ぁい!」

「でも自業自得でしょ、二股女には制裁をだね」


覚悟はしてきたけど……やっぱり辛いものは辛い。

泣きたくなるのを必死にこらえる。

強くなるなんて無理……上を向くことなんてできない。


「沙羅っ大丈夫!?これ履いたら!?」


相羽くんが私の目の前に来てスリッパを差し出した。


それはそれはとても心配そうな表情で。