「すみません、電話でます……」
恐る恐る電話に出た瞬間
『沙羅ぁーーー』
という、母の泣き声が聞こえた。
「なっ、お母さんっどうしたの!?」
『泰知(たいち)に……振られたぁ……』
泰知というのは母の彼氏のことだろう。
酔っぱらっているような声だ。
「なんで?だってまだスナックじゃ……」
『うん……お店に急にきてね……他の女連れてきて……お前とはもう付き合えないって……』
ああ、これで何度目だろう。
母が振られるたびに慰めなくちゃいけない。
「それで?帰ってきたの?」
『だって……こんな気分じゃもう働くの無理だったんだもん!』
自分本位で我儘で、昔から私を振り回してきた母。
結局は私がいないとダメって言って抱きしめるんだ。
でも情けないことに、私はこの時が一番母に必要とされてるんだって気持ちになれて、心が満たされていた。



