私は生まれたときからこの狭い2DKのアパートで母と二人暮らしをしている。
父の存在は知らない。
一度お父さんはどんな人なのか聞いてみたことがあったけど、不機嫌になられてそれ以来父のことを聞いたことがない。
きっと母にとって良い思い出ではなかったんだろう。
「じゃ、あとでね?」
そう言って上機嫌に電話を切ったところで「ただいま」と声を掛けた。
「沙羅!?帰ってたの!?」
「うん」
さっきまで機嫌よさそうにしてたのに私の顔を見た途端、「はぁ」とため息をつかれた。
「あんたさぁ、学校で問題起こしたんだって?」
「え!?」
「担任の先生から電話あったの!他の子を叩いたとかなんとか!」
叩いた!?
叩かれたのは私なのに、誰が言ったんだろうか。
反省文を渡した学年主任の先生は何も言ってなかったのに……。
「違う、そんなことしてない!」



