黒い龍は小さな華を溺愛する。


ミケは食べ終わってからも私についてくる。


「ごめんね、うちでは飼えないんだ……」


ミケを家で飼いたいけど、絶対お母さんが許すはずない。


「またね?道路に飛び出しちゃだめだよ?」


名残惜しかったけど頭を撫でてお別れした。


家までどうやって帰ったのか覚えていない。


ぼうっと、夢の中にいるような感覚のままアパートについた。


ドアを開けるとツンとキツイ香水の香りが漂う。


でもそれはいつものことで、うちの匂いなのだ。


「やだぁー!木島さんってばウケる!」


母の甲高い声が玄関の方まで聞こえてくる。


きっとお客さんと喋っているんだろう。


みんなの噂通り、私の母はスナックで働いている。


キャバ嬢ではないが、似たようなものだ。