黒い龍は小さな華を溺愛する。



手に顎を乗せて下から伺うように私を見てくる常盤くんの目が、優しく微笑む。


お酒を飲んでいるせいかとろんとしていて可愛い。


酔っていなきゃこんなに自分の事話さなかっただろうな……。


「その後お母さんとは……?」


「中学ん時久しぶりに会って。まぁ、半分頭ヤラレちゃってるから何回会いに行っても覚えてねぇのかなんの反応もねーんだけど……母親見てるとさ、なんもしてやれねー自分に腹が立って情けなくなんだよね」


「何もしてないなんて……そんなことない。常盤くんは十分お母さんの事思ってるよ」


親に殺されかけて、それだけでもショックで辛いはずなのに恨んでもないし、見捨てないでちゃんと会いに行ってる。


自分の事がわからなくても、それでも何度も……。


「だからせめて首席になってやろーって思って。中学の半分過ぎたくらいから猛勉強初めてさ、追い付くのにすげー大変だったわけよ。夜は先輩のツテでバイトやったり昼間真面目に学校行ってたしもう眠くて眠くて……」


軽く笑ってるけど、簡単なことじゃない。


どれだけの努力があったんだろう。


常盤くんはやっぱりすごい。


私と似てる家庭環境でも、卑屈にならず死のうともせず自分で道を切り開いていったんだ。