黒い龍は小さな華を溺愛する。



「でも俺が10歳ん時……精神状態が悪化して、毎日暴言を吐くようになっていって。ある日俺の首を絞めてきたんだよね」


「え!?」


「〝心中しよう〟って」


「心中って……」


衝撃的すぎて言葉を失う。


「最初は抵抗してたけど、だんだん〝ああ、この人は俺がいるから苦しんでるんだ〟って思ったらいなくなった方が母親は幸せになるんじゃねーかって」



「っ……」



「もう少しで息絶えるって時に警察がきてさ、隣の住人が呼んだらしい。親すげー声だったしな」



そう言って笑う常盤くんに、なんて声を掛けていいのかわからなかった。


お母さんに首を絞められるなんて……まだ小学生だったのにどんなに傷ついたんだろう。



「母親は入院して俺は児童福祉施設ってとこに行かされたっつーわけ」


「そんなことがあったなんて……」


「……実は俺も一時期いじめられてたんだよね」


「え!?と、常盤くんが!?」


「ん。だから沙羅のことも気になったんだと思う」


信じられない。


こんなに強い常盤くんがいじめられていたなんて。