黒い龍は小さな華を溺愛する。


やばい、泣きそうになって……


手で顔を隠そうとした時手首を掴まれ、私は常盤くんに抱きしめられていた。


何が起こったのかわからなくて硬直してしまった。



「と、常盤くん!?」



「なんでそうなんだよ」


「え……」


「ビビってるくせに俺のために頑張るとか。可愛いに決まってんじゃん」


「かっ可愛い!?」


離れようとしたけどガッチリホールドされてしまい、身動きが取れない。



「自覚ないのどうにかなんない?危険すぎっから」


「ごめん……必死で……」


「謝るとこじゃねーけど……まぁ沙羅はそういうやつだよな」


常盤くんの声が笑っていて少しほっとした。


「つーかこの服なんだよ、沙羅っぽくねーな」


「これ……」


紫藤くんに借りたって言ったら怒るかな……。


「宗佑か」


やっぱりわかるよね。


コクンと頷くと、「ムカつく」と苦笑いされた。



「さっきも言ったけど……私が無理にお願いしたの。なんのために偽の彼女になったのかと思って……」


「〝偽〟ねー。沙羅はそう思ってるよな」


「え?」


「最初は軽い気持ちで俺の女になればって言ったけど……」


その後の言葉が続かず、私は上を見上げた。