黒い龍は小さな華を溺愛する。


「さ、沙羅ちゃん!?」


横にいた紫藤くんが驚いて私を呼んだけど、振り向かなかった。


私の思い違いじゃなければ……

常盤くんは今、すごく困ってる。



「あ、あ、あのっ!!!」



久しぶりに大きな声を出したせいか裏返ってしまった。

4人が一斉に私の方を向く。


「沙羅!?」


驚く常盤くんの横で、絵里沙ちゃんも目を丸くしていた。


「ん?見たことねぇ顔だけど……誰だ?すげー美人じゃん」


特攻服着ていた人が私の肩に触ろうとした時。

常盤くんが私の腕を引っ張って自分の方に引き寄せた。


「夕晴!なんだよ、知り合い!?」


それに対して思い切って


「常盤くんの彼女です!」


と私が言うと、周りにいた人たちから「ぇえ!?」と驚きの声が出た。

自分でもよく言ったな……と思う。



「夕晴、女できたのか!?」


常盤くんはその問いかけにただ頷くだけ。


どうしよう、困らせてる?

余計なことしちゃったかな……。

でもさっきの表情を見たら黙って見てられなかった。



「マジかよ!どこの子!?名前は!?」


特攻服の人が私に迫って質問攻めしてきたけど、常盤くんがその間に立ってくれた。


「名前は沙羅。同じ高校だよ、あとは別にいいだろ」


「へぇ、夕晴が熱心になってる感じなんだー」