黒い龍は小さな華を溺愛する。



「な、ない!もうこのスマホにしか保存してないっ……」


「……もし嘘だったらてめーをこのスマホみたいにしてやっからな?」


首を縦に振り、かなり怯えている様子。

それもそのはず、今にも相羽くんを殴り殺しそうな形相だ。


「やめてもう……お願い」


震える足でなんとか常盤くんのところまで歩いて行った。


相羽くんはスマホの部品をかき集めると慌てて走って行ってしまった。


その様子を見ながら「クソが」と、常盤くんがつぶやく。

私は怖くて上を向けなかった。


どうしよう、常盤くんは画像の事知って……。

次の瞬間、温かいぬくもりに包まれた。


「と、常盤くっ……」


「怖がらせて悪い」


「そんなっ助けてくれて嬉しかった……」


「抑えようと思ったけど無理だわ、怒りで手が震えてる」


常盤くんは少し笑いながら、震えた手のひらを広げて見せた。

私はその手がとても愛おしく感じて、ぎゅっと握りしめた。


「沙羅がいなかったら死ぬまで殴り続けてたかもしんねぇ……」


「私こそごめんね……そんな思いさせて本当にごめん」


私なんかの為に常盤くんの手が汚れたら嫌だった。

泣きそうになり常盤くんのことをもう一度抱きしめると、常盤くんからもぎゅっと抱きしめ返され、苦しかったけど心地よかった。

もうこのまま何もかも忘れられたらいいのに。