黒い龍は小さな華を溺愛する。


バイトが終わり外へ出ると見慣れたバイクが停まっていた。

そしてその横で常盤くんが煙草を吸っている。

私に気付くとすぐに消して「お疲れ」と微笑んでくれた。


なんて幸せなんだろう。


こんな人が私に微笑んでくれる日が来るなんて。

同情でもいい。私が癒されているのは確かなんだから。


「どうしたの?中に入らないの?」


「待ってたんだよ、お前を」


そう言って私にヘルメットを被せた。


「え、私!?なんで……」


「なんでって。送るからに決まってんだろ」


「常盤くん用事あったんじゃ……」


「後輩に呼ばれて行ったけどこの時間に間に合うように帰ってきた。つーか外で待ってるってLIMEしたんだけど。見てねーの?」


すぐにスマホを確認するとLIMEがきていた。


「ごめんっ……今日忙しくて見る暇なくてっ」


「篠原さん言ってたな、沙羅が入る日教えてほしいって言ってた客がいたって」


「え、そうなの!?」


「だから厨房専門の子ですって言っとかねーと」


「忙しいときはそんなわけいかないよ……今日だって運んだりもしたし」


「客からなんもされなかった?」