黒い龍は小さな華を溺愛する。


すると嫌悪感たっぷりな表情で、ため息をつかれた。


「そーいうとこが嫌なんだよ。他人に勝手に俺のことべらべら喋りやがって……だからあいつの思い通りに生きたくねーんだ」


「お父さんは律くんのこと話してる時、寂しそうに笑ってたよ……?俺の責任だって言って……」


「今更じゃん、そんなの……」


「ううん、まだ遅くないよ。あんなに自分の事思ってくれる人他にいないからっ……お父さんのこと大事にしてほしい」


初対面で出しゃばったかなって思ったけど……

こんなに大事に思われてるのに、気付いてないのがもどかしくて。


「……沙羅さんだっけ?」


「う、うん……」


「なんなの?親父の愛人?」


馬鹿にしたように鼻で笑われた。


「違うっ!私はただのバイトだけどっ……」


どうしよう、やっぱりわかってもらうのは難しいんだろうか。


「うちの事情に関わんないでくれる?おせっかいなんだよ」


ドアを閉められそうになったのを、グっと押さえた。


「わ、私も!そう、だったの……」