「ところで、何でスウェットなの?」
私の服装をまじまじと見ながら、訝しげに高田さんが指摘する。
「えっと、助けた人が私にリバースしまして。いただいた着替えがこれだったので。まあ、仕方なくといいますか……」
「さすがにダサいでしょ」
「……ですよね」
「まったく、仕方ないわね」
高田さんは自分のショルダーバックを掛けると、
「着替え買ってきてあげるからここ片付けておいてちょうだい」
と命令し、颯爽と駆けていってしまった。
呆気にとられてポカンとしていると、開発部の社員さんたちがまたクスクスと笑い出す。
「あいつ、あんな態度だから敵を作りやすいんだけど、根はいいやつなんだ。まあ、理解するには時間がかかると思うけど、仲良くしてやって」
「は、はあ」
曖昧な返事でやり過ごしていると、ポンと肩を叩かれる。
「一成さん」
「よくこんなに調べたな。イベントはどうだった?」
「はい、とても勉強になったし、試食がとても美味しかったです!試食しすぎてお昼ご飯なくても平気でした」
「千咲は花より団子タイプか?」
「えっ、いやっ、ちゃんと感想は書いたしパンフレットもたくさんもらって……」
慌てて自分をフォローするも、一成さんはクッと笑って「冗談だ」と柔らかく笑う。
そして他の社員さんには聞こえないような小さな声で囁く。
「夕食は何か美味しいものでも食べに行こう。せっかく京都まで来たのだから」
「はいっ!」
力いっぱい返事をすると、一成さんはまたクッと笑った。
普段クールでポーカーフェイスな一成さんの表情が崩れるのが嬉しくて、私はますます笑顔になった。