準備もできた頃、開場の時間と同時に多くのお客さんたちでいっぱいになった。

しばらくは塚本屋の様子を見ていたけれど、この場に私の仕事はやはりない。
手帳を片手に人の流れにそっていろいろなブースを見学することにした。

たくさん情報を集めて一成さんに感想を報告するのだ。
きっとこれは自分の勉強にもなるし、内容によっては塚本屋にも貢献できるはず。

よし、と気合いを入れ、気になるブースへ手当たり次第に訪問する。

話を聞いて興味があれば質問してメモを取り、パンフレットをもらったり試食をしたりとなかなかに充実した時間だ。

会場の熱気もすごく、気付けばもうお昼を過ぎた頃。
試食をしていたからかお腹は空いていないけれど、一成さんたちはどうなんだろう。
もしお昼ご飯を食べていないなら買い出しくらいお手伝いできるかもしれない。

そう思って一度塚本屋の様子を見に戻った。
ちょうど人がはけたタイミングで高田さんが一成さんへ楽しそうに話しかけているところだった。

「そろそろ交代で休憩ですね」

「高田は先に休憩に入れ」

「私は後で大丈夫です。一成さんお先にどうぞ。あ、私何か買ってきましょうか?」

「高田ぁ~俺たちの分も頼む」

「え~しょうがないですねぇ」

「え~とは何だ、え~とは!」

他の社員さんにどやされながらも楽しそうにおしゃべりをする輪に、とてもじゃないけど私は入れそうになかった。

誰にも声をかけることなく、そっとその場を立ち去る。