気を取り直して今日の確認事項をおさらいだ。
秘書として仕事は確実にこなさねばなるまい。

食品イベントでは視察と商談をする予定ではいるが、今回塚本屋のブースを取り仕切るのは営業部と開発部だ。
一成さんは重要な部分の顔出しと、他社への挨拶まわりをすることになっている。

「その間、私はどこで待機したらいいでしょうか」

「俺と一緒にいてもいいのだが、それだと挨拶ばかりでつまらないだろうからな。今回のイベントは一般参加もありだから、自由に回ってみたらどうだ。試食もできるし楽しいと思う」

「それだと私はただ遊んでいるだけになってしまうような……」

「別にいいんじゃないか?」

「いや、だって皆さんお仕事してるのになんだか罪悪感があるというか」

「そうだな……だったら、できるだけたくさんのブースを訪れてたくさんのものを見聞きすること。あとで感想を俺に報告すること。これでどうだろう?」

「はいっ、わかりました」

「期待している」

一成さんは目元を少し緩ませると、私の頭を優しくポンと撫でた。
男らしくて大きい手から伝わる一成さんのあたたかなぬくもり。
ときめきが一瞬のうちに体中を駆けめぐり、俄然やる気がわいた。