「今度の出張楽しみだな」

「えっ、あっ、はいっ。京都ですしね」

「時間ができたらどこか観光しよう」

「いいんですか?」

「いいだろう?仕事さえ終わればフリータイムだ。ところで、出張同行は千咲からのたってのお願いだと聞いたのだが?」

「えっ?」

「違うのか?」

もしかしてこれも時東さんの企み……。
そんなあからさまにアピールされると私が一成さんを好きってバレてしまうんですけどっ。

時東さーん!と叫びたいのを抑えつつ、しどろもどろになりながら必死に理由を捻り出す。

「あ、いや、えっと、すみません、京都行ってみたかったんです」

「そうか、じゃあさっさと仕事を終わらせないとな」

一成さんは綺麗な笑みを浮かべる。
あまりの美しさにひゅっと息を飲んだ。

仕事中には見せない柔らかな表情。
これは私だけに見せてくれる顔だと思ってもいいのだろうか。

最近いろいろなことがありすぎて、自意識過剰になっているだけかもしれない。
一成さんに対して何かを期待している自分がいるような気がして気持ちがざわりと揺れた。