「じゃあ仕事もできて一成さんにも気に入られる人なら時東さんも認めるってことですか」

「そりゃまあ、それが一番丸く収まるものね」

別に私が認めることではないけど、と時東さんは鼻で笑った。

ふと過ることがある。

冷徹だと言われる一成さんだけど、開発部の高田さんとは友好的に見えた。
高田さんは見るからに仕事ができそうで自信にも満ち溢れていて、あの研究発表会の場でも期待されているようだった。

だからそういう人が一成さんにはお似合いで時東さんにも認められるのかな、なんて思ってしまった。

「あの、時東さんは高田さんって知ってますか?」

「高田さんって、開発部の?」

「そうです」

「高田さんかぁ。もしかして何か見ちゃった?」

思い当たる節があるのか、時東さんは険しい顔をする。
やはり何かあるのだろうかと胸がザワっとなる。

「見たというか、一成さんと親しいなと思って」

「あの子はね、ただの一成ファンだから気にすることないわ」

「ファン?」

「そう、ファンよ、ファン」

時東さんは手をパタパタと振って何でもないように言い捨てた。

だけどファンなんて言われて気にならない方がおかしい。
ファンだったらそれは「好き」と同じ意味なのではと勘ぐってしまう。

グルグルと回りだした思考は時東さんにポンと肩を叩かれて現実に引き戻された。

「よし、そういうことなら協力しちゃう」

「協力?」

「そう、私に任せて」

時東さんは妖しくニンマリと笑うと、一人楽しげにカクテルを煽った。