「はい!一成さんに褒められるように頑張ります」

嬉しそうに答える彼女の様子を端から見ていた私は、急に落ち着かなくなる。

一成さんは元々開発部にいたのだから、そのメンバーと親しくても当たり前のこと。
そんなことわかっているというのに、どうしたというのだろう。

ザワザワ、モヤモヤとした気持ちを押し殺すべく胸のあたりをぎゅっと握る。
けれどどうしても二人の姿を追ってしまって気が落ち着かないでいた。

そんな風に見ていたからだろうか、ふいに高田さんがこちらに気づいて不審な視線を向けた。

「あら、どちら様?ここは若手発表会の会場よ。部外者立ち入り禁止なんですけど」

「えっと、すみません、会場のセッティングしたら出ますので」

「ああ、もしかしてあなたが一成さんの新しい秘書?副社長に飼われてるって有名よね。ふふっ、そんなこと言われて恥ずかしくないの?それにあなた派遣でしょ?まあ、派遣ならペットで十分かもしれないけどね」

高田さんは手を口に当てて可笑しそうにクスクスと笑った。

何か言わなくちゃと思ったけれど、何も言い返せない。
確かにそうかもしれない、なんて思ってしまったからだ。
そんなことを初めて会った人に改めて言われなくとも、すでに私の中では懸念事項として持っている。

秘書仲間でも派遣社員は私だけ。
副社長の秘書が派遣社員だなんて、一成さんは嫌じゃないだろうか、恥ずかしくないだろうか。
ずっとそのことで悩んでいるというのに。