今度こそ大きく息を吐き出して、椅子にペタンと座り込んだ。
まさか一成さんのお父さんにまでご挨拶することになるとは。
縁談話を断るための婚約者のフリをする仕事だったはずなのに、大丈夫だろうか。
「一成さん、あの、大丈夫なのでしょうか?」
「何か問題があったか?」
「いえ、社長にまで婚約者だって紹介して」
「不満か?」
「そういうことではなく」
「父さんも千咲のことは気に入っているからな、いいんじゃないか?」
「気に入る?!」
「小動物みたいで可愛いと言っていた」
「え、ええっ……」
あれ?
なんかこれ聞いたことある。
確か夏菜も同じようなこと言っていた。
――うちで飼ってるハムスターに似てる
私、塚本家でそんな風に見られてたってこと?
「うう~」
突然呻き出した私に、一成さんは怪訝そうに眉を寄せる。
「どうした?」
「……何でもないです」
頭を抱えたくなりながら、腹いせとばかりにお茶をがぶ飲みした。
これじゃいつまでたっても一成さんに見合う女になれない。
……いや、なってどうするのって話だけど。