しばらくして戻ってきた時東さんに、すぐさま謝りに行く。土下座する勢いの私に、時東さんはクスッと肩を上げた。
「まあ、誰にでも失敗はあるわよ。私も一緒に確認しなかったのがいけないし」
「いえ、本当にすみません。ご迷惑をおかけして」
「大事にならなかったからセーフよ。次は確認怠らないようにね」
時東さんは優しく私の肩をポンポンと叩いた。何でもないように自席に戻り、そして思い出したかのように「あ!」と声を上げる。
「あー、副社長からは叱られるかもしれないけど、負けないようにね。あれは鬼だから」
「……はい」
叱られるのは当然だ。とんでもないミスをしたのだから。さっきの電話の声だってひどく冷たかった。
そういえば、と私は思い出す。
――秘書になった子を毎回泣かせてダメにする
――仕事に厳しいし視線だけで人を殺しにかかるから
そう、時東さんに忠告されていた。
それに一成さんも……。
――俺の秘書になる者は俺が嫌になってすぐに辞める
「うわぁぁっ……」
思い出して、また頭を抱えたくなった。