【書籍化に伴い冒頭のみ公開】クールな御曹司の溺愛ペット


……のも束の間。

「えっ、えっ?」

やってきたのは二階のカフェ。
目の前にはモーニングセット。

目をぱちくりさせている私に、一成さんは淡々と言う。

「コーヒー?紅茶?」

「あ、コーヒーで……って、いや、あのっ」

困惑する私をよそに、店員さんがコーヒーを運んでくる。
湯気がくゆるカップからはとても良い香りが漂い、鼻をくすぐった。

「すごくいい香り」

「コーヒーは種類で香りが変わる。これはブルーマウンテンでリラックス効果がある」

カップを両手で持ち上げ香りを楽しむ。すうっと体に入り込んできて浸透していく。確かにリラックス効果がありそうだ。

メニューを見ると、コーヒーだけでなく紅茶や日本茶の説明も書かれていて、気分に合わせて選ぶことができるようになっている。

「やっぱり手帳を持ってくるべきでした。勉強しなきゃ」

きっとそのために連れてきてくれたに違いない。お茶の老舗の副社長の秘書ともあろうものがお茶の知識皆無ではいけない。だから私への教育の一貫なのだろう。

なるほど、これも秘書の務めなのかなんて納得しかけたのだが、

「そういう意味で誘ったんじゃない。朝食がまだなんだ、付き合ってくれ」

と言われ、治まっていたドキドキが呼び起こされてしまった。