【書籍化に伴い冒頭のみ公開】クールな御曹司の溺愛ペット


「いらっしゃいませ。スーツをお探しですか?」

突然に声を掛けられ私はびくっと肩を震わせた。

「あ、えっと……」

「スーツというか、この子に、働くオフィスレディ的な似合うもの、ありますかね?」

尻込みした私に代わり、夏菜がずずいと店員さんと会話を始める。こういうのも本当に苦手。夏菜はなんでも器用にこなしてしまうけど、私は上手く言葉が出てこない。

もはやコミュ症かも……なんてうっすら思ったりもする。

「そうですね、スーツにこだわらず、黒のパンツに上は色物のジャケットを合わせてみてはいかがでしょう?例えばこちらのベージュとか」

「ジャケットの丈は短めの方がいいんじゃない?足が長く見えるかもよ」

店員さんと夏菜が代わる代わる私に服を見立ててくる。

目が回るような勢いで勧められるがまま購入し、まだ初給料も入ってないくせに散財してしまったのだった。

いや、これは致し方ない出費だ。
社会人としての身だしなみ。

これで少しは一成さんや時東さんに近づけるといいのだけど。