そんな出来事からしばらくしてからのこと。

夏菜が友達を家に連れてきた。
あれだけ気に入らないと言っていたのに、どうしたというのか。
気の合う友達を見つけられたということか。

それならそれでいいのだが、あの夏菜が気に入った友達というのが気になって、俺は顔を出すことにした。

「あ、えっと、こ、こんにちは。片山……千咲……ですっ。お邪魔します……」

緊張しているのか若干頬を染めながらおずおずと見上げてくる彼女、片山千咲はうちの家系では見たことがないタイプの柔らかい雰囲気を持つ高校生だった。

「ごめんね、千咲。家族総出で出迎えて。私が友達連れてくるのが珍しいみたいでさ、千咲のこと気になってるみたい」

「えっ、ええっ、そうなの?恥ずかしい……」

「そうなのよ~。夏菜ったらこんな可愛いお友達ができたのねぇ。よかったわねぇ」

「ゆっくりしていきなさい」

父も母も、なんだかんだ夏菜のことを心配していたから友達として大丈夫なのか見極めているようだ。
かくいう俺も、その一人なのだが。

「こっちの無表情なのがお兄」

その紹介の仕方はどうなんだ、と夏菜を見るが、少しも悪びれる様子はない。

「あ、えと、はじめまして」

千咲は真っ赤な顔をしながら小鳥がさえずるような可愛らしい声で挨拶をした。
夏菜とはまったく違う可愛らしさになぜだか胸がざわっとなった。

このとき完全に塚本家は千咲を認めたのだと思う。
夏菜もしょっちゅう千咲を連れてくるようになったし、俺も顔を合わせば挨拶をしたり、テスト前には勉強をみてやったりもした。

自然に俺は「千咲」と呼ぶようになり、千咲も俺のことを「一成さん」と呼ぶようになった。
夏菜が千咲を連れてくることが楽しみになったし、仲良くなるにつれて千咲も笑顔が多くなった。
相変わらず頬をピンクに染めるのだが、それがなかなかに可愛らしい。