あたたかく包まれていつまでも寝ていたいこの感覚は、松風のふかふか布団で寝たから。
いつもと違う目覚めにしばらくぼんやりと
目が虚ろぐ。
「うーん……」
軽く伸びをして目覚めると、目の前に現れる綺麗な顔。
「ひっ!」
「起こしてしまったか?」
「い、いえ、えっと、あれ?」
なぜか一成さんと一枚の布団で寝ている。
布団が二枚くっついていて、それぞれの布団で寝たはずだったのに。
「誤解のないように言っておくが、これは決して寝込みを襲おうとしたわけではなく、千咲が転がってきたから受け止めただけだぞ」
「うそっ!やだ、私ったら」
「あまりにも可愛いから寝顔を見ていた」
「ひえっ!」
「まあ寝込みを襲ってもよかったんだが。千咲に嫌われたくないからな」
真剣な顔でうんうんと頷く一成さんは、浴衣の襟元が少し崩れて朝から色気がだだ漏れだ。
目のやり場に困ってふいと目をそらす。
恥ずかしい、というのもあるけれど、一成さんを見ているとドキドキしすぎてどうにかなってしまいそうだから。
「……嫌いませんよ。だって私はずっと一成さんのことが好きだったんですから」
一成さんのひゅっと息を飲む音が聞こえた。
と思ったらずずいと覗き込まれる。
「またそうやって可愛い事を言う。俺を煽ってどうしたいんだ」
甘く柔らかく、それでいて挑発的な言葉は私の体を痺れさせる。
こんな気持ち、今までの私からしたら矛盾していると思うんだけど……。
なぜだか言わずにはいられなかった。
「一成さんのペットになりたい。可愛がられたいです」
コツンと額が当たり一成さんの吐息がすぐ近くで聞こえる。
そして、ぞくりとした囁きが耳に響く。
「愛が重いと文句言うなよ。猫可愛がってやる」
頬を撫でる一成さんの手に身を委ねる。
どちらからともなく求めた唇は、これ以上ないくらいに甘くて蕩けるような深いものだった。
【END⇒一成sideへ続く】