しかも千咲を堪能って……。
堪能って?!
これって一成さんに求められてるってことだよね。
私だってもう高校生じゃない、大人になったのだからこれくらいで動揺するわけにはいかないのに。

嬉しいけれど心の準備がまったくできない。
さっきからバックンバックンとまるで心臓の音が聞こえるよう。

落ち着いて、心臓。
落ち着くのよ、千咲。

音もなく私の隣に座った一成さんは、無駄のない動きで私の唇を奪っていく。
あたたかくて柔らかい感触は、簡単に私から理性を奪っていきそうだった。

「あ、あ、あ、あのぉっ、待ってください!」

「どうした?」

「あの、えっと、……そう、お風呂!ここのお宿、お風呂が売りだって言ってました。ほら、二十四時までしか開いてないし。先にお風呂堪能したいなぁ、なんて」

苦し紛れの主張に、「そういうことなら」とすんなり納得してくれる。

密かにほっと胸を撫で下ろすが、

「確かに、湯上りで浴衣の千咲はそそるな」

と顎に手をやりじっとこちらを見るので、私は真っ赤になって反論した。

「な、なに想像しているんですか!一成さんのエッチ!」

手元にあった枕を投げつけるも軽くキャッチされ、「健全だろう?」と口角を上げた。

ぐぬぬ。
なんだか負けた気分だ。