「どうします?」
「どうしましょうかね」

新大久保から歩いて3分くらいで、総武線の大久保駅がある。
それに乗っても新宿に向かえる。大久保駅まで歩くか。

「あの、何処まで行かれるんですか?」また白々しいウソを吐いた。
「アタシは新宿までですよ。んー、歩いても行けない距離ではないですけどね」
この言葉がキッカケになった。
「じゃ、ボクも新宿、ていうか店までなんで歩きましょうか?」
「え?んー。そうですね、二人で歩けばそんなに遠く感じないですよね」
彼女は少し悩んだ様子を見せたが、二人で新宿まで歩くことにした。

歩きながら、お互いに色々と質問をした。

彼女の名前は アイ。苗字は教えてくれなかった。
職業はアルバイトらしいが、どこでどんなバイトをしてるのか聞いたら、
内緒だと言われた。
ボクの年を聞かれたので答えたら、2つお姉さんだね、と笑って答えた。
生まれは東北のほうで、東京でバンドを組みたくて19の時に友達4人で上京したらしい。
結局、ボーカルの子がホストに貢いだり、
ドラムが実家に帰ったり、ベースが結婚しちゃったりと
立て続けにメンバーが居なくなり、バンドは解散したらしい。
今でも一人暮らしの家にはギターはあるが、
彼女曰く、もう随分の間弾いてないとのこと。
「夢は諦めたんだ。でも実家に帰るのも面倒だし、なんとなく東京にいる感じ」
そう言った彼女は、少し寂しそうだった。