好きなこと。嫌いなこと。どうでもいいこと。
世界には大きく分けてこの3つしか存在しない。
好きなこと。嫌いなこと。どうでもいいこと。
ボクの周りには、どうでもいいことが溢れ過ぎている。

どうでもいい義務教育を終え、どうでもいい高校とどうでもいい大学を卒業して、
所謂普通の、可もなく不可もなく、特に親や大人に迷惑をかけることなく生きてきた。

目立つのが嫌いだった。成績はいつもオール4。
将来の夢は、サラリーマン。そう書いたら先生が怪訝な表情を浮かべたことは覚えている。

結局ボクは大学を卒業して、フリーターになった。
自己アピールが苦手で、就職できなかった。
初めて両親に心配をかけた。
ボクには何故かそれが初めて感じた優越感のように思えた。
髪を染めて、ピアスを開け、ボクの遅い反抗期が始まった。

新宿駅から5分ほど歩いた雑居ビルの4F。
そこにあるJAZZ専門のレコード屋。ボクのバイト先だ。
別にJAZZが好きな訳じゃなかったけど、
父の影響で洋楽には詳しかった。

父は一人息子のボクをそれは大事に育て、
ボクの欲しいものはなんでも買い与えた。
ボクはそれが少し歯痒かった。
酒も飲まず、煙草も吸わず、ギャンブルもしない。
休みの日は洋楽を聞いて、コーヒーを飲む。
つまらない父親を見て、微笑んでいる母親。
端から見れば絵に描いたような暖かい家庭。
一番どうでもいいことだった。