しらすの彼

「私は嬉しいですけど」
 ぼそ、と言うと、小さな声だったにも関わらず相良さんは気づいて微笑んだ。
「俺も、信乃ちゃんに会えて嬉しいよ」
 言いながら、私の手をとって指を絡める。それだけで、私の体温がかかかとあがってしまう。

「そ、それはそうと、あの、今度の日曜日、すみません、予定が入ってしまいました」
 日曜日は、久しぶりにデートの予定だった。

「そうなの? 急な用?」
「はい。父がこちらへ出張に来るついでに母もついて来るらしいので、久しぶりに一緒に食事でもどうか、と言われまして」
 多分、食事は口実で、一人暮らしをしている私を心配して見に来てくれるんだと思う。それがわかるから、迷ったけどそっちを優先してしまった。
 言い訳がましくそんなことを告げると、そう、と言ったきり相良さんは黙り込んでしまう。

 あ、気を悪くしたのかな。
 申し訳ないという気持ちと、デートを楽しみにしていてくれたのかなという嬉しい気持ちが入り混じる。