しらすの彼

「お疲れ、太陽。証拠がとれたおかげで、今回は無事に小野を検挙できそうだ」
「当然です。ここまでやって逃したら、俺、この仕事やめますよ」
 相良さんは、なぜか少し怒ったような口調だった。諏訪さんはそんな相良さんの睨みを気にもせずに私に視線を移す。

「悪かったね、浅木さん。あまり太陽を責めないでやってくれ。君を囮に使うことを決めたのは、私だ」
「あなたが?」
「ええ。太陽は最後まで反対していた。そんなことしたら、もう君を口説けなくなるってね」
「え?」
「そんなこと言ってない!!」
 相良さんがあわてて立ち上がった。

「似たようなことは言っただろ? そういうわけだから浅木さん、非難するなら私だけにしておいてくれ。じゃあ太陽、明日はいつも通りに。新しい案件だ」
 最後の言葉に、相良さんが顔をひきしめた。
「はい」
「では」
 私に向かって優雅に挨拶すると、諏訪さんは帰っていった。

「何しに来たんだ、あの人」
 隣でぶつぶつ言っている相良さんの声が聞こえた。