しらすの彼

 私の問いに、相良さんは肩をすくめた。
「以前は、ね。SPだった」
 ああ、なるほど。強いわけだ。

 警察のSPと言ったら、ただのボディカードとはわけが違う。文武両道に長けた、ほんの一握りのエリート中のエリート。武道やってる小野先生でも簡単に抑え込まれちゃったのは、おそらく経験値が違うんだわ。

「バイト、って言ってませんでした?」
「うん。今はバイトの身。任務中にここ、やっちゃってね」
 そういって相良さんは、立てた自分の膝を、ぽん、と叩いた。

「普通に生活する分には問題ないんだけど、今までと同じ任務にはつけなくなっちゃって。その頃、独立してた先輩が声をかけてくれたから、退職してそっちに。バイトで、民間の探偵みたいなことやってる」
「もしかして、私、囮に使われました?」
 私が小野先生に執着されているのを知っていて、私に近づいたんだろうか。
 相良さんは、苦笑する。

「結局は、そうなっちゃった。誤解しないでほしいけれど、最初はそんなつもりじゃなかったんだ」
「最初?」