しらすの彼

 そう思っても不安で、わずかな隙間から外をのぞいてみた。
 空はまだ薄い瑠璃色だった。アパートの前の道は、早朝ということもあって誰もいない……え?
 すう、と血の気が引く。

 道の向こうにある電柱の横に、黒い人影をみつける。背格好からして男の人っぽい。
 電柱に隠れてよく見えないけど、立ち方からしてこっちを向いている……ような気がした。

 動悸が激しくなってくる。冷や汗がにじんで、足が震えた。
 きっと関係ない人、と思い込もうとするけれど、足の震えは止まらない。
 ぎゅ、とカーテンを握りしめる。

 怖いよ……相良さん……!

 相良さんの笑顔を思い浮かべて、少しだけ冷静になる。
 とにかくそこにいるのか小野先生じゃないことを確認すればいいんだ。こっちからじゃよく見えないな。
 私は窓の反対側に移動して、またカーテンの影からそっとのぞいてみる。と。

 あれ?

 ……相良さん?

 まだ薄明りでよくは見えないけれど、そこにいるのはどうやら今まさに心に浮かんだ人だった。
 小野先生じゃないと確認できたことで不安は消えたけど、次に浮かんだのは疑問だ。

 相良さん……だよね。なんで、相良さんが?