透き通った君に僕の初恋を捧げる


「樟葉ちゃん。謝って。」
「ごめんなさい!!」

 樟葉が綺麗なお辞儀と共に謝罪をする、がしかしそこにはもう桔梗はいない。
 俺を叩いた後そのまま桜の木の裏に隠れてしまった。
 それを伝えると樟葉は律儀に桜の木の後ろまでもう一度謝りに行った。
 その際お辞儀でそのまま桔梗にまた刺さりそうになったが、桔梗側も刺さるのは嫌なのだろうか素早く避けていた。

「それで、えっと。どうする?」

 はじめが問いかけ、スマホの時間を見せてくる。
 そろそろ入学式が終わる時間だ、ここで幽霊がどうのこうのなど確かに言ってられない。
 しかも今桔梗が隠れている桜の木は学校のフォトスポットとしてよく使われている。人が集まる事は確定事項だ。

「…とりあえず部室戻る?」
「それは良いけど、その。幽霊?の子は…。」

 視線が俺に集まった。俺しか聞ける人がいないんだ、それはそうなるに決まっているよな。
 桔梗が地面に投げたままの学生カバンを拾い砂をはらった。
 これも俺は三人からはパントマイムをしている人に見えているんだろうか。綺麗にしたカバンを桔梗に渡した。

「もし良かったらなんだけどさ、俺たちの部室に来ないか?彼奴らみんな阿笠さんと話がしたいんだって。」
「私と……?」

 桔梗が怪しんだ顔をする。幽霊と好き好んで話したいと言われればみんなそういう顔になるのか。

「俺たちオカルト部で……うん。どうして泣いてたかとか聞かせてくれると嬉しいんだけど。ダメかな?」
「…いいですよ。私の事見えるの宮澤先輩しかいないですし。」

 少し悩んだがようだが承諾を貰えた。ていうか今宮澤”先輩”って言われた。後輩って素晴らしいな。