彼女の隣に座っている間、俺は彼女の観察をしていた。
黒く艶の髪のある髪の毛はとても綺麗で、ハーフアップと言っただろうか。
両サイドから編み込まれている三つ編みを後ろで結んでいる。目元は少し垂れていて、眉毛も同じく少し下がり気味だ。口元には一つ黒子が。
それもとっても可愛いと思った俺の心臓はぎゅっとなった。
でもやはり、彼女の体はどう頑張っても少し透けていた。
普通の人間ではないのはすでに理解している。それをわかっていても俺は彼女に惹かれている。
それはもうどうしようもないくらいに。
「あ、あのさ。名前聞いても…?」
「……阿笠桔梗(あがさ ききょう)です。…えっと。先輩ですよね。今ここにいるって事は。」
「そう!俺は宮澤尊、今年から三年生なんだけど。」
「私、今日ここに入学するはずだったんです。」
俺の言葉を遮り、桔梗が言った。
俺はその時に確信した、やっぱり彼女は幽霊であり、先ほど聞いた交通事故で亡くなった女子生徒の正体はこの阿笠桔梗という少女だと言うことを。
なんて言ってあげればいいのかわからず俯いていると、早足の足音が聞こえてきた。
「やっと見つけた!!尊ここにいたよ!!」
息を切らした樟葉が駆け寄ってきた。
樟葉の声にはじめとシエナも駆けつけてくる。
そういえば桔梗を見つけた事で三人を置いてきたのをすっかり忘れていた。
「すっかり忘れてるって顔してるね。」
「うん。」
「尊そういう所あるよね。」
シエナが言うと樟葉とはじめも頷く。
自覚はなかったが俺はそういう所があるらしい。反省はしようと思う。
横を向くと突然人が増えて驚いたのだろう、桔梗は三人を見上げて目をぱちくりとさせている。
