西園寺学園―――県内トップの進学校でありながら、別名、“暴走族の監獄”。

                  ◇

「みんな!元気だった?」

「「「サラッ!」」」


私は白咲由姫、中学二年生。


「もーうっなんで最近来なかったのっ!?寂しかったよーっ」

「り、凜ちゃんっ!?」


私が今いる、ここは、暴走族”noble“のアジト。

西園寺学園に在籍する、No.2の暴走族。


「り、凜ちゃ……っ離し……っ」


く、苦しい……つ!


「あ、ごめんごめん~つい嬉しくて、力いれちゃったっ!」


ぱっと私から離れたのは―――


「き、気を付けてね?窒息死するかと思っちゃったよ……凜ちゃん」


南凛太朗くんこと、凜ちゃん。


「おい南。サラの半径二メートル以内に近づくな」

「ぐえっ、首つかまないでよ~っそれに滝くんにそんなこと命令されたくないなぁ~」


凜ちゃんの首をつかんだのは―――


「勇くん!は、離してあげてっ!?」


滝勇治くんこと、勇くん。


「……」

「ぷはっ!死ぬかと思った!滝くんの馬鹿力……っいたあっ!?」

「サラに近づいたお前が悪い」


凜ちゃんに拳骨をくらわせたのは―――


「しゅーちゃんっ!?」


東舜くんこと、しゅーちゃん。


「チーム内での暴力はだめ……っ!」


ぼ、暴走族の人たちは、すぐに手を出しちゃうから……っ。


「ご、ごめん……サラ」

「悪かった……」


勇くん、しゅーちゃんの順番で謝ってくれた。


「由姫」

「わっ!」


後ろから頭をポンッと叩かれる。


「れ、れーくんっ!」


自然と顔に笑みが広がる。


「由姫。会いたかった」

「うんっ、私もだよ……っ!」


唯一、私を通り名の”サラ“じゃなく、本名の”由姫“と呼んでくれる人。

彼の名は、西園寺蓮くんこと、れーくん。


「あ!蓮くんサラを独り占めしてる!ずるい!」

「別に」


れーくんに触られるたび、ドキドキするな……っ。凜ちゃん達には、しないのに……なんでだろう?


「今日も見回り、行くんだよね?」

「おう。俺たちがそろえば最強だからな」

「うん!れーくんも、しゅーちゃんも、凜ちゃんも!行こうっ!」


幸せだなぁ……こんな毎日が、ずっと続けばいいのに――――



みんなと見回りをして、門限の五分前に家に着いた。家では、お母さんと輝が深刻そうな顔をして、こっちをみている。


「由姫、話があるの―――」


お母さんの言葉に、私は雷に打たれたような衝撃を覚えた。


「え?九州に、引っ越し……?」

突然の出来事に、口がふさがらない。


「そうなの、仕事の都合で……ごめんね由姫、輝……」


さっきまでの、楽しい時間が、もう―――


「でもこれは何年かだけだから。数年後には、戻ってこれるの」

「俺は別にいいけど……」


……っ、心配、かけちゃだめだ。


「私も……っ!仕事の都合なら、しょうがないもんねっ!」


本心を悟られないように、お母さんと輝に笑顔を向ける。


「早く引っ越しの準備、しなくちゃっ!忙しくなるねっ!」