跳ね上がる水しぶきを見て楽しみながらショーは終了した。
時間がなくなる前に、とすぐに席を立ち上がり歩き始める。
館内に入ると、先程見たショーのイルカが真上にいた。
「…すごい」
見上げている綾瀬にカメラを向けてシャッターを押す。
パシャっと音が鳴り、綾瀬が振り向いた。
その写真はとても綺麗だった。
画面を見つめていると、横から覗き込まれる。
「うわっ!」
「え?そんなビビる?ごめんて」
くすくす笑いながら「いい写真ー」と微笑んでいる。
「ロック画面にしてもいいんだよ?」
「それは彼氏がやることじゃないですか」
穏やかな会話が流れ、陽も少しずつ沈み始めた。
夜、水族館から出て歩いていると、綾瀬がどうしてもと二人でツーショットを撮りたがった。
写真を撮るのは苦手だったが、渋々OKを出すと、綾瀬がカメラを構えた。
そしてシャッターを押した瞬間、並木道がライトアップされた。
まるで魔法がかけられたようだった。
カメラは、ポーズをとる二人とライトアップされた並木道を映した。
綾瀬が見ている間、どこか入れそうなレストランがないか辺りを見回す。
丁度目の前にガラス張りの気軽に入れそうなレストランがあった。
暗闇から反射された自分の姿を映し出したそのお店は、明るめの音楽が流れている。
ガラスを見れば、長い髪を金髪に染めた綾瀬と、短い黒髪でメガネを掛けた八瀬が映っていた。
不覚にも、合わないな、っと思ってしまった。
でも傍からみても合わないと言われるだろう。
そんなことを脳裏に浮かべて、綾瀬をレストランへ招き入れる。
値段も安く、美味しそうなメニューが豊富だった。
パスタが人気なようだったので、二人ともパスタを頼んだ。
昼間に見たような、嬉しそうな綾瀬の顔を見つめていると、「どしたの?」と顔を覗き込まれる。
「な…!んでもない…です」
「そっか。今日はありがとうね。まさか水族館だったなんて」
「こちらこそ。それより昼間の方達、どう見ても友達じゃありませんよね?」
図星だったようで、綾瀬は「うっ…」と体をしぼませた。
「あ、無理して言わなくても…」
「……ううん、助けてくれたから。言う」
急に真剣な顔になったかと思うと、また俯きながら話し始めた。
「あの…ね」
綾瀬は八瀬に全てを話してくれた。
「……いじめ、ですか。」
「うん。今言ったように、そんなに酷くはないんだけど。」
「辛かったですよね…。でも、今なんでそんな…なんていうか…ギャル?」
「ギャルって言うなっ」
綾瀬に少し活気が戻ったようで安心した。
「ふふっ、すいません。」
「…目立ちたくないとは思ったんだけど、逆にいじめられそうだったから、目立っていじめられてる子助けた方が、よっぽどいいかなって。」
見た目の割に、素敵なことを考えていた綾瀬に少し惹かれてしまう。
「…素敵ですね」
ぼそりと呟くと、綾瀬が唖然とした顔をしている。
「あっ、や、あの…」
「…ありがとう」
「───はい」
二人は照れるようにパスタを巻き始めて口に入れる。
初めての感触が少しくすぐったかった。


