するとそんな気持ちを察したのか五十嵐浩介が頭をかいて「悪い。少し言い過ぎた。だけど、努力の方向が違っていた可能性はある」と、言い直した。


「努力の方向性?」


「あぁ、自分に合わないメークをいくら模索したって、似合わないままだ。似合うメークをしてみたら、きっと変わる」


それは今まで日の目を浴びることなく過ごしてきた私の胸に響くものだった。


こんな私でもなにか変わることができるんだろうかと、期待してしまう。


「頼む。今日は俺の言うとおりにしてほしい」


そう言って頭を下げられると、もう何も言えなかった。


こうして憧れだった五十嵐浩介と会話することも、今後無いかもしれない。


それなら今だけ一緒にいて、いい思い出をつくってもいいかもしれない。


私は体から力を抜いて「わかった」と、頷いたのだった。