「どうして?」


今朝学校へ来てからすぐに清水くんに謝罪しようとしたのだけれど、目も合わせてくれなかった。


声をかけても無視して通り過ぎていってしまった。


「だって、キスされたときはもう起きてたんだよね? ならどうしてその時に怒らなかったんだろう?」


そう聞かれると私も首をかしげてしまう。


確かに清水くんはあの時起きていて、だからキスしてしまったことを質問されたのだ。


だけどその時はまだ怒っていなかった。


「ちゃんと話をしたほうがいいと思うけど?」


「そうだけど、でも無視されるんだもん」


無視されたときの痛みがチクリと胸に蘇ってくる。


話しかけても冷たい視線を向けられて、友人らと共に教室を出ていってしまった。


私はそんな清水くんの後ろ姿を見送ることしかできなかったのだ。


「それなら放課後を待つしかないね」


桃の言葉に私は力なく頷いたのだった。