「はい」

私のその声は先輩に届いたようで、その後の先輩の顔は優しく嬉しそうな顔だった。
目元は柔らかくなり、口は大きな笑う形で喜んでくれたようだった。

「じゃっ、場所から決めるか!
どんなテーマにするか、なにか提案はあるか?」

夜明先輩は私にそう問いかけた。さっきと打って変わって真剣な表情だった。私はこの時の夜明先輩が好きだった。

私と同じように写真のことが好きな人。同志のような気持ちになる。

そして、私も考えた。ポートレートはその人と自分の関係性を写したものと考える人もいる。けど、私はそれよりも映ってる人の良さを表現したい。そう思っている。

夜明先輩は、優しくて温和な雰囲気をしている。なら、それとは逆を映すのはどうだろうか。

(そうしよう)

私はその案を取り入れた。後は、そう思い先輩をじーっと見つめる。髪は丸み帯びていて、爽やかなストレート。少し茶色にかかったのは優しい雰囲気を掻き立てる。

瞳は優しげでも、真剣な表情をする時は鋭さがちらりと見れる。

(うん、撮るとしたら室内のモノクロかな)

そして、口元に手を持ってきていたので、手にも注目する。自分の手と見比べても男の人の手をしていて、柔らかな雰囲気とは正反対だった。

「あの、」

私が声をかけると考えていた夜明先輩と瞳がぶつかる。
それに少し怖気付いたが、すぐに先輩の瞳は柔らかになり私に微笑んだ。