「おい、何をしている?早く「リセット」と言え!」
遠くに見えたのは、黒い影。
あれは。
「大丈夫だよ。」
すると、私の耳に聞き馴染みのある声が囁かれる。うん、と小さく頷けば、ふわりとその声の主である白い影は離れる。
来て、くれたんだ。
私は黒い影を睨みつけた。類くんを見れば、覚悟を決めた顔をしている。
「俺は、もう現実を受け止める!だからもうこんなものはいらない!」
類くんは、つけていた腕時計を外して黒い影に投げつける。その瞬間、少しずつ、今見えている世界が崩壊していった。
そしてそこにあったのは、どこかで見たような白。でもそこに人形の姿はなく、声も聞こえない。あの黒い影も消えた。
あぁ、やっと終わった。しかしその思うことは、類くんとの別れが近づく合図でもあった。
「幻の世界が壊れたの。これで類くんは本当の世界に帰れる」
これでもう、本当に類くんとはさよならだ。



