「大丈夫かよ」


「ん〜、」


あの“宜しく”と頭を下げた後のことは
思い出せないほどのお酌と挨拶でよく覚えていない


気がつけば翔樹の部屋のソファに座っていた


「ほら」


冷たいペットボトルのお水を渡されて
それを頬にあてる


「飲み過ぎじゃねぇ?」


「・・・ん」


だって、怖い顔の人が笑顔でお酌に来るのよ?
そりゃあ、笑顔でってお願いはしたけど
断れる術があるなら教えて欲しかった


「風呂は明日にしろよ」


「ん」


「どっか辛れぇとこある?」


「ううん」


「ほら」


目を開けられない私を介抱してくれる翔樹は

時折舌打ちしながらも優しくて


気がつけばベッドの中だった


「ほら、寝ろ」


「ん」


大きな手は背中を優しく撫でていて
意識が落ちる寸前

少し高い体温に包まれた気がした





・・・




「・・・っ」


頭が・・・割れる

お酒は強い、と思ってた
酔わない、とも思ってた


なのに・・・目覚めた瞬間
頭を締め付けるような痛みに

昨日の魔会を思い出した


「ん・・・起きたか」


「死ぬ」


「え」


「頭が割れる」


「クッ、二日酔いな」


「動かないで」


「あぁ」


「何時?」


「もう8時」


「・・・ぇ」


休みじゃなければ遅刻の時間だ


「朝飯の誘いがきたが、断った」


「・・・そう」


「ここに持ってくるから二人で食おうぜ」


「うん」


一緒にいるようになって翔樹には気の利くポイントが多いことを知った


だから、リハビリで付き合う関係も
案外居心地が良くて楽しい


「頭は割れそうだけど、歯磨きしたい」


「歯科医、な」


「だって」


「昨日そのまま寝かせたからな」


「・・・っ、言わないで」


橘病院で8020コラムを書いているのは私だ


会話を続けるごとに落ち着いたかに見えた頭痛も
起き上がった瞬間の痛みに
注がれるまま飲んだ昨日の自分を悔やんだ




・・・



重ジィ特製だという中華粥を食べたあとは頭痛薬を飲んだ


そして・・・動けるようになった頃を察知したかのように現れた奏ちゃんに
引き込まれて入った“女湯”には


上座の美魔女三人が待ち受けていた