翔樹の長い指が
躊躇いがちに目蓋に触れる


「咲羅」


翔樹の声にまた涙が落ちた


「早く俺を好きになれ」


「・・・っ」


泣きながら睨む私を
喉を鳴らして笑った翔樹はそのままオデコに口付けると立ち上がった


「ヒャッ」


「掴まってろよ」


「歩かなきゃ」


「今日、怪我したばかりだろーが」


「此処までは歩いたじゃん」


「リハビリだ」


「・・・フフ」


「・・・なんだ?」


「リハビリ、多くない?」


「チッ」


強い日差しの中で密着する身体も
不思議と嫌ではない

翔樹が歩き始めるとゆっくりと起き上がった三匹は
どうやらついて来るらしい


「咲羅、好かれてんな」


「なに、ヤキモチ?」


「チッ、んな訳ねぇ」


「フフ」


和風の建物に繋がる近代的な翔樹の家
その向こう側に可愛らしい屋根が見えた


「ねぇ」


「ん?」


「あの、ちょっとだけ見えてる屋根って」


「あぁ、優樹さん家」


「中も可愛いかったけど、外観も可愛いんだね」


「完璧母親の趣味だがな」


あのplumeを作り出す人が
優樹君のお母さんってのも俄に信じ難い


「てか、優樹君のお父さんって?」


「亜樹さんは親父の弟でplumeの社長」


「・・・え?」


「ヤクザじゃないのかって?」


「うん」


「優羽ちゃんのために社長もしてるが
完全に表に居る訳じゃねぇ」


「そうなんだ」



家系図と相関図を作って貰えないだろうか・・・


だって、登場人物多すぎるよ?


「クッ」


「ん?」


「今頃、奏あたりが朝陽さんに強請って相関図を作ってもらってるはずだ」


「・・・マジ?」


「あぁ」


他人に興味を持たなくなって長いから
人から向けられる好意や善意を面倒だと思ってきた

そんな私に真っ直ぐ向き合ってくれる翔樹の周りは

温かい人が多いと思う


だからなのか・・・

その相関図が欲しいと思った


話題に上がる人物を思い浮かべたいとも思った


「咲羅ちゃん、お帰り〜」


「チッ」


玄関で待っていてくれた奏ちゃんは紙筒を持っていた


「フフ」


「え?なに?咲羅ちゃん」


戸惑う奏ちゃんにお礼を言おうと
翔樹の腕からおりたところで


「俺の部屋だからな」


翔樹が先手を打った