「いい、のか」


「仮で良い?」


「・・・仮?」


「リハビリなら“仮”だよね」


「チッ」


「翔樹がそう言ったんだもの」


「チッ」


「やっぱやめる?」


「・・・・・・仮で良い」


「仮のうちは手は出さないでね」


「・・・・・・・・・あぁ」


「フフ、返事が遅い」


「チッ」


「仮だけど浮気はやめてね」


「俺をみくびんな」


「じゃあ、よろしくね仮彼氏さん」


「チッ、咲羅テメェ」


膝の上で横抱きにされたまま逃げる間も無く


片方の眉をあげた翔樹の顔が近づいてきて


フワリと唇が重なった


「・・・っ」


何度も啄むように触れていた唇が離れると


オデコが合わせられた


「咲羅」


「ん?」


「浮気すんなよ」


「・・・フフ」


「この前の男とか」


「・・・院長の息子ね」


「もう会うなよ」


「岳也先生も同じ職場なんだから
会うなとか、無理」


「そうじゃねぇよ、二人きりで会うなってこと」


「あ〜、そっちね」


「そんな小さい男じゃねぇ」


「フフ、はいはい」


「チッ、テメェ」


ケラケラと笑っていた口は
また塞がれた


そして・・・

今度は、その唇が


こじ開けられた



「・・・っ」


驚きに離れようとした頭は
後頭部を支える翔樹の手に阻まれる


真大とは違う


大人のキスに



頭の中が真っ白になる



「・・・ぁ・・・っ・・・ん」



散々翻弄したあと
リップ音を立てて離れた翔樹は
もう一度ギュッと抱きしめてきた



身体から伝わる早い鼓動は
どちらのものか分からない


ただ・・・
「好きだ」と囁く翔樹の甘い声に



なぜだか泣きたくなった